にのだん社会保険労務士事務所

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にのだん社会保険労務士事務所だより「たすき」令和4年12月号(No.37)

【所得税法上の扶養親族と健康保険における被扶養者】

 年末が段々近づいてくると、年末調整に関連して「所得税法上の扶養と健康保険における扶養の違いがややこしい」という意見をよく聞きます。今回は少しでもその違いについて理解していただければと思いお話させていただきます。(今回、税法上の配偶者特別控除については省略します)

 まず所得税法上の扶養親族については、あくまで税の専門家ではないので一般的な話だけにしますが「生計を一にする親族で、所得金額が一定以下の者」というルールが存在します。

 では、生計を一にする親族とは、国税庁のHPには「日常の生活の資を共にすること」「別居している場合は、生活費、学資金または療養費などを常に送金しているときや日常の起床を共にしていない親族が、勤務・就学等の余暇には他の親族のもとで起居を共にしているとき」と記載されており、具体的に数字で示されているものではありません。しかし、所得金額については48万円以下と数字で定められており、その年の1月1日から12月31日までの実際の年間収入で判断するかたちとなります。給与収入のみの方なら給与額により所得控除額は異なりますが、103万円の方なら55万円の給与所得控除額が決まっていますので差額48万円以下となり対象となります。

 世間一般に103万円以下とよく言われているのが、これを理由にしているためですが、収入については非課税金額を含まない、その他給与所得以外の所得がある場合計算は複雑になります。詳しい内容の疑問や相談については、専門家である税理士の方や国税庁が開設している電話での相談サービス、チャットによる相談サービスをご活用いただければと思います。

 次に健康保険法における被扶養者については「主として被保険者により生計を維持している者」で税法上の扶養親族では所得でしたが、被扶養者については一定以下の収入が決められています。

 税法上の扶養親族のルールと大きく異なるのは、被扶養者が別居の場合、被扶養者の収入額を上回る仕送り額が生計維持のため必要とされている点や被扶養者の収入額の解釈も過去ではなく、常に認定日以降、その日ごとに年間収入見込みが130万円未満(60歳以上は180万円未満)かつ被保険者収入の1/2未満であるか、そして被扶養者の収入については課税非課税関係なく継続的な収入があれば、それを年額に換算して収入見込み額を計算するルールなどが大きな違いになります。被扶養者を追加する届出で収入証明として非課税証明書が有効になる場合もありますが、退職を理由に被扶養者になる時には離職票のコピーで収入が0円と判断されるのも、常に被扶養者の収入については現時点からの解釈により証明できれば有効になるからです。健康保険における扶養についてのご質問は私のような専門家である社会保険労務士にご相談されることをお勧めします。

【CMで見かける「すきま時間」を活用したアルバイト】

 最近テレビで自身の空いている時間、つまり「すきま時間」を活用したアルバイトをPRするCMを頻繁に見かけますが、現在の日本において労働力人口の減少、働き手不足の問題は非常に深刻化しています。国も「働き方改革」の名のもとに最近では副業・兼業の推奨など、新たな働き方から生まれる労働力の発掘を推し進めているのかもしれません。

 それにマッチするかのように、短時間でも働きたいと考えている人に勤務時間や金額等の条件がマッチした仕事を紹介する会社が存在し、そこから新たな労働力が生まれることは人手不足を解消する有効な手段であると私も感じます。しかし、そのためにはいくつかの法律の順守が前提になることを専門家として厳しい視点でお話しなければなりません。

 これは前にも私自身の体験談として事務所だよりで投稿しましたが、私は社労士事務所開業間もない頃、生活費を稼ぐために「日々紹介」という特殊な働き方を経験しました。仕事先は日用品を作る工場でしたが、単発で勤務する仕事について労働者派遣のように派遣会社と雇用契約を結ぶのではなく、とある会社より仕事を紹介され、紹介先の会社と本人との間でその日ごとの労働について直接雇用契約を結ぶ仕事でした。直接雇用のほうが労務管理についても行き届くであろうという思い込みがありましたが、実際は派遣社員と変わらない印象で、工場で働くパートさんにも「派遣さん」と言われたりしました。勤務終了後、手渡しされる現金についても紹介料を中抜きされていたせいか時給計算より若干少ない印象がありました。何より労働基準法で定められている労働条件通知書が勤務先の会社から渡されることもなかったので条件の詳細は分かりませんでした。仕事を紹介している会社からはメールで「○月○日行けますか?」「時給○○○円です」「勤務時間は○〇です」「駐車場は地図で送ります」など簡易的な案内のみでした。

 私が経験した仕事を紹介した会社とCMを出している会社とは一切関係はありませんが、すき間時間を有効活用したいと考えて求人に応募する人たちは勤務先で雇用関係が発生する時点で当然法律の中で保護されるべき労働者です。日々紹介を行う会社の労災に関するQ&Aを見ると「労災が適用されるかどうかは事業所様とご相談ください」と無責任な回答に私は驚きました。仕事先を無料で紹介している会社ではなく、人材を会社に紹介して手数料を(乱暴な表現ですみませんが)労働者の人件費から搾取しているのなら、紹介先の会社が法律を正しく順守しているかをしっかりチェックするのは仕事を紹介する会社の当然の責務かと感じます。労災だけでなく、思った以上に仕事の能力が足りないという理由で会社都合により帰らせた場合の休業補償など、雇用する側が必要最低限の法律を理解せずに労働者を派遣社員のように扱ってしまうと「労災も休業補償もあなたには適用されない」とか「あなたは直接雇用ではなく業務委託だから」など事業主と労働者との間で起こり得るトラブルはいくらでも想定できます。テレビCMで「すきまバイト」はお気軽な雰囲気を醸し出していますが、お互いが最低限の労働に関するルールを知り、仲介する会社がしっかりとチェック機能を果たすことにより、働き手不足の解消に繋がる新しい働き方として成長していくと感じます。

~最後までお読みいただきありがとうございました~